東條耿一作品集
東條耿一(とうじょう・こういち 1912-1942年)は、ハンセン病療養所多磨全生園で生涯を閉じたカトリックの詩人。
その壮絶な人生を通して絶望と希望を見つめながら、すぐれた詩作を行う。作家北條民雄の親友でもあり、その最期を看取った。
本書は、綿密な調査・校訂を踏まえ、解題・年譜を付した、初の作品集である。
日夜 病菌の裡に住まへど
かくいのちの在るは嬉しからずや
貧しき一椀の大根おろしを愛ずるは幸ひならずや
われとて何時の日か
父の御許に帰り行くらん
なべてはそれまでの愛の十字架
ああ忘れえぬ人の世の一事ならずや
さらば喰らはん 餓鬼の如くに喰らはん
大根おろし 大根おろし
(「一椀の大根おろし」より)