教会と劇場
――西洋近代において劇場や映画館が「新しい教会」になっていった。その代わり教会の社会的役割が薄れ、力をなくしていったという逆転現象もあるように思うのですが。
平田 それは価値が多様化していますから、ある程度はしょうがないところがあるでしょう。ただどうでしょう。私は大学で教えているので、大学の改革の話にも参加させられます。そこで、海外の大学にあって、日本の、特に国立の大学にないものが二つある、教会と劇場だ、とよくいうんです。要するに、魂を静めるところや魂を育てるところが日本の大学にはないんです。いま私がいる大阪大学は4万人の巨大なコミュニティですから、そこに劇場も音楽ホールも美術館もないというのは異常なことなんです。それをだれも異常な事態だと思わないこと自体も異常だと思うんですが。大学には身体を鍛える場所はたくさんある。もちろん頭を鍛える機関はたくさんある。でも心を鍛えたり心を豊かにしたり心を慰めたりする機関がまったくない。これはコミュニティとして異常なことなんです。それは本当に日本の社会を象徴しています。しかし、それはもしかするといい面もあったかもしれませんね。日本はのんびりしていて暮らしやすいから、そういうことを社会的な機能としてあまり意識しなくてもなんとなくやってこられた社会、自然のなかにそういうものが組み込まれている社会だったから、強い一神教とかをあまり必要としなかったのかもしれない。
特集 特集 芸術・社会批評・霊性
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私とキリスト教 / 小中陽太郎 × 姜尚中 44
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